みらいのいえ [随筆 色いろ]
さあ めをつむってごらん
おもいうかんだのは
どんなおうち?
誰かが言った・・・
「お前の未来を見てやるよ」
へぇ~ 面白そう!
どうしたら、そんなことが分かるの?
なんて、がやがやとひとりの男の子の周りに集まっていく。
男の子は、エヘン♪と、得意げに鼻を鳴らすと、
まず、みんな目を瞑れよと・・・
集まったみんなは、それぞれにギュッと目を瞑り、
それからどうするの!?って、口々に言い合った。
男の子は言った。
「いま、最初に見えた家は、どんな家だい!?」と。。。
どんな家・・ったって、んなもん分からん!!とか言いつつも、
それぞれに何か見えたようで、ひとりが口火を切ると、
次々と、じぶんが見た家の様子を言い出した。
ぼくが見えた家は、豪華ででっかいシャンデリアの吊るされている、小さな家。
でっかいシャンデリアがあるのに、家はちっさいのか!?
わはははは おまえって、へんなのぉ~(笑)
私の見た家は、とっても広いお部屋が、たくさんあったよ。
ぼくは、裸電球が吊るされている部屋を見たんだけど・・・
あたしは、ピアノが置いてあって、ベッドがあって、小さな机があったよ。
ぼくのは、普通の部屋だった。
今の家みたいに、食卓のテーブルがあって、流し台があって・・・。
ふ~ん。。
みんなそんな家が見えたのか!?
いまからは、もう変えちゃだめだぞ!!
男の子がそういったとき、ひとりの女の子は、ドキドキしてしまいました。
だって、その女の子はとても大きくて立派なおうちが見えていたのに、
口に出したときには、みすぼらしいボロボロの家だった・・・って言ってしまっていたから。。
どうしよう・・・と思いましたが、男の子は、もう変更しちゃだめだって言うし、
女の子は、もともとが大きなお家の子だったから、
逆の見栄を張って、みすぼらしいと言ってしまっただけだったしで・・・
なんとも居心地の悪いまま、男の子が次の言葉を言うのを待っていました。
男の子は、言いました。
ぼくは、みんなの未来が分かるんだ。
将来、みんながどんな家に住んでいるか、
それが分かるんだよ!! って。
みんながいま、見えたって言ったその家が、
それぞれの将来住んでいる家になるんだよ!
女の子は思いました。
よかった・・・
あたしが本当に見えていた家は、とっても大きくてステキな家だったものね♪って。。
そして、ほっとした気分で帰ろうとしていた時、
男の子が、言いました。
ちゃんと最初に見えた家のことを言ってたかい!?
もし、違うものが見えていたのに、嘘をついて違うことを言ったりしなかったよね!
もし、違うことを言ったなら、
未来は少し形を変えて、口に出したほうへと転がっちゃうからね。
でっかいこといったヤツは、そんな家に住めるようになるし、
ちっちゃいことをいったヤツは、そんな家に住む羽目になっちまうってことだよ。
ぼくにはみんなの未来が見えるんだ。
わははははははは
みんなは、なんとなく笑いあって帰って行きましたが、
女の子は、胸が詰まる思いで、なかなかその場からの一歩が出なくなってしまいました。
どうしよう・・・
どうしよう・・・
ちゃんと見えていたことを言わずに、変な見栄を張っちゃった。。
何気ない子供時代の、何気ない遊びごと。
なのに、このことがずっと心にへばりついて、大人になっても離れない。
女の子は、いつの時代もこのことを思い出し、
決してボロボロの家に住むようにならないように、
決して、ヘタな見栄は張らないように・・・と、努力を重ねていきました。
やがて、女の子も歳をとり
孫やひ孫に囲まれるようになると、
また、あの頃こことが甦ってきました。
ああ・・・ あの時見栄を張らなければよかった。
だけど、あの時見栄を張って打ちのめされて、よかった。
のほほんと大人になっていたなら、いまのこの暮らしは無かったろう。
あの時、うんと後悔して、
いっぱい努力を重ねることが出来て、本当によかった・・
でも、あたしは・・・
未来が見える瞳なんていらないわ。
そう言うと、髪も真っ白になったかつての女の子は、
ゆっくりと瞳を閉じて、深い眠りにと墜ちていったのでした。
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