49のそら [随筆 色いろ]
よんじゅうきゅうのそらは
あなたをだきしめるのに
じゅうぶんなじかんでした
49回目の朝は
やわらかな空気をまとって
ゆっくりと明けていきました
あなたの旅立ちは
梅雨とは名ばかりの
とても空が透き通った日でした
電話で急変を聞いてから
出かける仕度をしている間の
その短い時間に
あなたの魂は
窮屈な身体を抜け出して
自由に大空を飛びまわる方を
ちゃっちゃと センタクしてしまったようでした
あたし達が会いに来るまでと
励まし続ける 姉ちゃんを残したまま
あなたの口癖は
逝くときは 誰にも迷惑をかけず
でしたね
その言葉のままの旅立ち
あなたらしいったら ありゃしない
あれから 幾日も過ぎ
抜け出した魂が ほんの少し淋しさを見せたのか
47回目の空は とても悲しそうな朱(あけ)の空
涙の飛沫を振りまくように
ねっとりとした空気の中にありました
48回目の空を見ながら
高速をひた走る頃には
大きな稲妻が空中を走り回り
時折 空の底が抜けたような雨を降らし
涙をオドロキで忘れさせてしまうような演出まで・・・
ああ・・・
なにからなにまで
あなたらしい
49回目の朝は あなたの暮らした家の窓から
目の前に広がる山々の稜線を見て目覚めました
朝日が昇る前の暗闇
たなびく雲が 鮮やかな色に染まっていく瞬間
車に乗って 空を追いかけて
ほんの少し 山に近づく
ふと 笑い声がしたようで 振り向くと
剣岳の上空に 虹色彩雲が・・・
大好きな人には もう逢えたかしら
ずっと一緒に暮らしていた姉ちゃんは
まだ 少しだけ淋しげだけど
笑っているよ
二人とも わらってるよ
みんな みんな ワラッテルヨ
あなたの完璧な演出で
今ではもう わらっていられるよ
ありがとう
毎日見上げた空のそれぞれに
あなたがいました
ちょっとしんどいときは
なんだか助けられているような気持ちになりました
空に両手を う~んと伸ばし
ギュって抱きしめる
なんだか あなたがあたしの名をよんで
ちょっとウィンクしたように
星がまた 瞬いて・・・
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