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とらのかくらん [随筆 猫]







ぎゅっと めをつむる

そのいっしゅんに
「ま」が しのびよる










ねぇ ちょっと春めいてきたじゃなぁい?
そんなことないって!?

そりゃ、ポカポカ陽気でのんびりとお庭で昼寝・・・なんて気になった日もありゃ、
はらはらと白いものが舞い堕ちる・・・なんて日もあったりしたけどさ。
あたしとしちゃ~、なんとく気分が春だったわけよ。
だからって油断しちゃったっていう訳じゃないんだけど、どうにも鼻がグシュグシュして、
ご飯がちょっとだけ食べづらくなったからさ、
いつもより、ほんの一口だけ食べる量を少なくしてみたの。

そしたらお母ちゃんが心配しちゃってさぁ~。
すぐにでも病院に行かなくっちゃ!!って騒ぎ出して・・・。
あの子に、すぐ病院へ連れて行くようにって言ったのよ。

まあね。。。
お母ちゃんの心配も、わかんないこたぁ無いのよ。
ちょうど去年の今頃は、ご飯が全然食べられなくて、
どんどんやせ細っていったのを、ずっと見ていたからね。
あの時は、何日か様子を見よう・・・っていって、
結局、病院へ行くのが少し遅いぐらいだったからさ。。
今度は早めに・・・なんて思ったんじゃないの!?

あたしゃ、自動車に乗るのはとっても怖いし、
病院も好きじゃないけど。。。
お母ちゃんのため・・って、覚悟を決めたわけよ!!

そこであたしはいつものように、
病院行き用の大きな洗濯ネットの中に入って、
でっかい洗濯物入れの篭のなかへ・・・。
こうして、あの子に抱きかかえられるようにして、
いざ、行きつけの病院へ!!


いゃだなぁ~
ああ。。。 いやだなぁ・・・








と、ここまではよかったのよ・・・・。
行きの車の中では、あたしが大泣きしないようにって、
手を握ったり抱っこをしたり、見える電車の話なんかしてくりたりしてさ。
だからこの日はひさびさに、それほど声を張り上げなくてもよかったんだ。

でもね!! ちょっと聞いてくれる!?
ここからなのよ、あたしの災難は!!!!!

病院について、あたしを降ろすために車のドアを開け、
あの子があたしの入った洗濯籠を持ちながら、
背の高い自動車から下りようとしたとき・・・・。
一瞬、あたしは篭の中で身体が浮いたのよ。
ふわっとね!!
無重力状態って、宇宙飛行士って、こんな感じなのかしら?なんて思えるほど。
ふわっとね。

永遠と思えたそんな状態は、ガザッって音と共に終わりを告げ、
あたしの身体はしたたかに篭の底に叩きつけられちゃった。

普段のあたしなら、そりゃ猫らしく、
キャット空中三回転なる技も発揮できるんだけどさ(汗)
この日は洗濯ネットに包まっちゃっていたから、どたっと堕ちるがまま。。
なんとも、猫としては情けないのなんのって・・・。。。
おまけに不意打ちだったものだから、泣くの鳴かないのって・・・。
もちろん泣いたわよ!!
大泣きよ!!
すっげぇ怖かったんだもん。

そしたらあの子ったら地べたにおちょきんなんかしちゃってさ、
へらへら笑いながら、
「転んじゃった・あはは どてって転んじゃってさぁ~」なんて、
近くを歩いていた女の子やお母さんたちに見られたのが、
よっぽど恥ずかしかったみたいで、
いい訳のような、呟きのような・・・そんな感じで、
大きな声で、転んだを連発!!
あたしの方が恥ずかしくなっちゃうってもんよ!!!
はぁ~ぁ。。。。ふぅ。。。


あっ!! そうそう。。
おちょきん・・・ってのは方言でね、
正座のことを言うの。
あの子は、そんな転び方をしょっちゅうするから、
よく膝っこぞうにあざを作っているの。
どうしたら、あんな転び方が出来るのか・・・。
一回見たいもんだわ!!って、今回はあたしも目を瞑っちゃっていたから、
どんな転び方をした、見えなかったのよねぇ~
すごくザンネン!!









そんなこんなで病院で受付を済ませ、診察台へ・・・
洗濯ネットから出してもらうと、なんだか本当にホッとして・・・。
そう・・・ ただちょっと、ほっとしただけだったんだけど・・・。
恥ずかしいかな、この年になったって言うのにお漏らしを・・・。
いいでしょ!!
いろいろあって、やっと地面が動かない所に着いたんだもん。
ほんのちょっとの、悪阻祖ぐらい。。。
ああ゛~   超ハズカシイ~!!!


でも、みんな優しいの。
あっという間にお漏らしを片してくれて、
後は何事も無かったように振舞ってくれるの。
先生も看護婦さんもあの子も・・・・。。。
あたしの小さなプライドを、守ってくれたんだよね。
ほんと、やさしくって、また泣けてきちゃった。。

先生達は、あたしのつめを切ったりしながらいろいろ検査をして、
前回改善してからは、あまり数値が悪くなってないからいいけど、
少し脱水症状が見られるからって、皮下点滴をしてくれたの。
お鼻のグシュグシュのことも考慮して、点滴に少しお薬も入れてくれたんだ。


あれから5日ほど経ったいま、
あの子の膝っこぞうにはでっかい瘡蓋が出来て、
なかなか膝の曲げ伸ばしもままならないみたい。

そんじゃ、あたしは・・・? っていうと、
あの皮下点滴が効いたのが、
お肌がプリンプリンで、毛も艶々になって、
なんとも、女っぷりの上がったことあがったこと!!
まさか17歳のおばあちゃんだとは、だあれも思わないくらいよ(笑)



たまの病院行き
鬼の霍乱ならぬ、とらのかくらん・・じゃないの? と言われそうだねぇ~







  ** いいわけ **

    看護師さんと表現するべき所を、看護婦さんと表記しています。
    やさしい看護をしてくださる方のイメージが、
    どうしても看護婦さんという言葉の方に・・・と、
    勝手に腹黒さの乗り移ったあたしの脳細胞が、善良な右手を狂わせてしまうのです。
    すみませんのぉ~。。。





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